◆出題形式

  試験時間は60分で、大問はリスニング問題と長文問題の2つ。この傾向は15年以上変わっていない。試験開始後5分経ってからリスニング音声が放送される。
  設問形式は、記号選択問題もあるが、記述問題が中心。長文問題だけでなく、リスニングにも記述問題が含まれている。リスニング放送の分量はかなり多めで、なおかつ、長文問題も1000語以上の超長文が出題される。全体的な英文の分量、設問の記述量ともにかなり多い。

◆設問傾向

《リスニング》
 例年、〔A〕、〔B〕、〔C〕の3題が出題され、放送される英文の内容は、〔A〕は会話文、〔B〕と〔C〕は論説文である。
&ebsp;〔A〕および〔B〕は、会話または文章のあとに放送される短文が、放送内容に合致するかしないかを選ぶTrue or False 問題、会話または文章のあとに放送される疑問文に短い英語で答える問題である。〔A〕と〔B〕のいずれが True or False 問題か、英語回答問題かは、年度による。〔C〕は、空欄のある英文が与えられており、放送される英文に基づいて空欄を埋める、いわゆる「ディクテーショ ン」問題である。

《長文問題》

◇素材文

  長文を読み、それに関する小問に答える問題である。長文の分量は1000語以上におよぶ。近年の出題英文の内容は、会話を含んだ物語文であることが多いが、過去には論説文も出題されている。
  池附英語の特徴として、文章は長いものの、いたずらに難解ではない、ということが挙げられる。用いられている単語も基本的なものが多く、高校初級レベルの 英単語が混ざることはあるが、中学範囲を大きく逸脱したものは見受けられない。また、構文の面でも、句や節が複雑に入り組んだ難解なものは見られない。このあたりは、難関私立高校の英語とは趣を異にする。

◇設問
  例年、出題される小問の数にぶれがあるが、以下の問題はほぼ必ず出題されている。
    ①前置詞補充……空欄に適する前置詞を選択肢の中から選んで入れる問題
    ②動詞補充……空欄に適する動詞を選択肢の中から選び、必要があれば適切な形に直して入れる問題
    ③下線部英文和訳……英文中の下線部を日本語に直す問題
    ④和文英訳……英文中で日本語になっている部分を英語に直す問題
    ⑤下線部内容説明……下線部の内容や理由を50字前後の日本語で説明する問題
    ⑥文章内容説明……文章に関する質問に対し、主語と述語を含んだ英文で答える問題
    ⑦文章内容把握……文章全体の内容の理解を問う問題。出題形式はさまざま
    ⑧自由英作文……文章にかかわるテーマについて30~35語の英語で説明する問題
  ⑦の出題形式はさまざまである。文章内容を説明した英文から合致するものを選ぶ問題(あるいは True or False の形で答えさせるもの)、文章中の出来事を説明した英文を並び替えて、文章の要約を作成する問題などの形で出題されている。
また、英文中の空所に適切な文を補充する問題や、単語を並び替えて適切な英文を作成する整序英作文問題も出題されたことがある。

  出題者(池附の教員)の意図を探るためにも、出題内容を整理すれば以下のようになろう。
    (A)基本文法事項の運用を問う問題……上記①、②が該当
    (B)文法および構文把握力を問う問題……上記③、④が該当
    (C)文脈把握力・文章細部の理解力を問う問題……上記⑤、⑥が該当
    (D)全体把握力・要旨把握力を問う問題……上記⑦が該当
    (E)論理的思考力と表現力を問う問題……上記⑧が該当

1つの長文を用いて、基本事項から発展的内容まで、幅広く、様々な力を試す問題構成である。池附の英語は、受験生の総合的な英語力を測る良問であると言えよう。

◆難易度

《リスニング》
  長めの文章が流されるので、最初のハードルが高くなる。放送内容も、日常会話だけでなく説明文もあり、易しくはない。また、記号選択だけでなく記述解答が要求されることを踏まえると、設問のレベルも高めであると言える。

《長文問題》
  1000語以上の超長文が出題されるので、文章の論旨を把握し、話の展開を追うには骨が折れる。ただし、国立大附属ということで、私立高校とは異なり、いたずらに難解な語彙や構文が用いられる文章は出題されない。語彙レベル・構文レベルとも標準的である。
  設問に関して言えば、英作文でやや難度が高い問題も見受けられるが、おおよそ標準的である。普段から構文を意識した読解を行っていれば、英文解釈・英文和訳で困ることが無いどころか、得点源とさえ言える。ただし、会話や文脈に即した自然な和訳を作ることは少々難しい。文章内容把握問題や内容説明問題は、素材文が超長文であり、物語文独特の表現やストーリー展開を把握せねばならないことを考慮すると、やや難度が高いと言える。

《総合難易度》
  試験時間と文章量の多さ、記述量の多さを考慮すると、やや難しい部類に入る。しかし、いたずらに難解な設問が無く、単語や構文の難度の面で抑制が効いた出題であることを考慮すると、真の英語力を磨いてきた者は、8割以上の点数をとることも決して不可能ではない。池附英語の難しさは、文章レベル、設問レベルにはなく、「記述力」と「時間との戦い」という二点にあり、そこをクリアすれば(もちろん、そのためには本質を突いた学習を積み重ねる必要があるが)、頭を悩ませるような問題ではない。

◆対策

《総論》
  当然ながら、池附英語に取り組むにあたっての基礎体力を養っておかねばならない。ここでいう基礎体力とは、①「品詞と文型の知識に基づいた精確な構文把握力」、②「構文把握力と基礎文法の知識をベースにした上での英文速読力」、③「中学範囲から高校初級レベルの重要単語・フレーズに関する知識」のことであ る。
  中学校では、文法知識や文型の知識をまともに教えないのであるから、①に関しては、塾や参考書を利用して自学しなければならない。構文把握に基づいた精確な読みが出来なければ、いくら大量の英文読解演習を行っても、それは沙上に楼閣を築こうとするようなものである。
  構文把握力を養成したのちには、1つの文を、返り読みすることなく、英米人同様の頭の働かせ方で読解する練習を積まねばならない。この練習によってようやく②の段階がクリアできる。
  ③に関して言えば、中学校の教科書に出てくる英単語だけでは心もとないので、市販の単語帳でどんどん英単語を覚えていく必要がある。高校中級レベルまでマスターしておけば、池附英語の単語で困ることはないであろう。
以上の対策は、あくまで文章を読むための基礎力養成の段階である。文章を読む能力とは別に、設問に解答するための術を磨く必要がある。特に池附英語は記述回答の問題が多いので、普段から積極的に、日本語・英語を問わずさまざまな文章を書く癖をつけておかねばならない。
  ①の構文把握の問題と連動するが、文型を把握したうえで正確な日本語を作成する練習(英文解釈)、単語を並び替えるのではなく、一から自分で英文を作る英作文の練習を積んでおく必要がある。

《リスニング》
  池附のリスニングのレベルは高いので、普段から聞き慣れを作っておく必要がある。
まず、普段の学習で言えば、単語を覚える際は、CDなどを活用して発音を意識し、長文問題を解く際にもCDを活用して音読演習を行うこと。特に、スラッシュリーディングの演習を行って、英文を返り読みせずに把握する訓練を行うこと。この作業は、リスニングのみならず長文読解にあたっても大きな威力を発揮 するはずである。
  具体的な対策としては、市販のリスニング問題集を用いて、演習を積むと良い。放送英文が長めで、語彙や内容もレベルが高いので、高校生向けのものを用いる 方が良い。ディクテーションの練習問題が含まれているものを選ぶと良いだろう。ディクテーションを行う際には、いくつかの空欄から始めて、最終的には一文すべてを書くことができるようになるのが目標である。

《長文問題》

◇英文読解
  当たり前のことだが、そもそも文章を読めないことには、設問を解くことができない。池附英語の英語長文を読みこなす真の英語力をつけることが、設問の対策やテクニックに走るよりも最重要である。
基本的な対策は、総論で述べたように、どんな文章にあたっても揺らぐことの無い精読力をつけたのち、速読演習を行う、というものである。
  残念ながら、中学生対象の問題集や参考書で、文型や構文の意義を力説したもの、それらの演習に主眼を置いたものは皆無である。学校はもちろんのこと、塾の中にも文型を教えないものがあるくらいであるから、適切な指導者が周囲にいない場合は、高校生向けの英文解釈参考書を用いて学習することになる。たとえば、伊藤和夫の『ビジュアル英文解釈 Part1』(駿台文庫)の前半、同『英文解釈教室 入門編』、『同 基礎編』(いずれも研究社)などは、ある程度文法の基礎を固めた中学生にも使いこなすことができるので、これらを用いて、文型や構文の意義を学び、英文解釈力を高めるようにしたい。
また、中学・塾の教師でも「まともな日本語」を書けない者は多い。構文がとれても和訳が作れないようでは、池附英語には太刀打ちできない。英語力はもとより、日本語力においても信頼できる教師を見つけて、添削を行ってもらう必要がある。
  実際に池附の英語長文を読むにあたっては、かなりの超長文なので、パラグラフごとの要点や、登場人物の行動および心情を的確にまとめて、欄外に書きながら読み進めると良い。この作業は、設問を解く際にも効力を発揮するはずである。

◇設問
上記の「設問傾向」で以下のように出題内容を分類した。

    ①前置詞補充……空欄に適する前置詞を選択肢の中から選んで入れる問題
    ②動詞補充……空欄に適する動詞を選択肢の中から選び、必要があれば適切な形に直して入れる問題
    ③下線部英文和訳……英文中の下線部を日本語に直す問題
    ④和文英訳……英文中で日本語になっている部分を英語に直す問題
    ⑤下線部内容説明……下線部の内容や理由を50字前後の日本語で説明する問題
    ⑥文章内容説明……文章に関する質問に対し、主語と述語を含んだ英文で答える問題
    ⑦文章内容把握……文章全体の内容の理解を問う問題。出題形式はさまざま
    ⑧自由英作文……文章にかかわるテーマについて30~35語の英語で説明する問題

以下において、項目ごとに対策を述べる。

①前置詞補充問題
  過去15年間にわたって出題されている。まずは、文法参考書で、前置詞の意味や働きを確認すること。その際に大切なのは、「in=~で」などと機械的に日本語訳を覚えるのではなく、前置詞の持つニュアンスを知ることである。池附の前置詞補充問題は、単に訳を
  覚えているだけでは太刀打ちできない。できれば、高校生向けの詳しい参考書を参照して、前置詞のニュアンスや概念をしっかり学びたい。
  実際の問題は、前置詞を入れる前後の文脈が問われている。前置詞の前の動詞と後ろの名詞をよく見て、文章の流れも考えて、適切な前置詞を入れるようにする。

②動詞補充
  この設問は、前置詞補充問題以上に文脈把握の要素が強くなる。前の動作と後ろの動作をよく考えて入れる。なお、適切な形に変形する際には、3人称単数、過去形、現在分詞、過去分詞と、すべての可能性がある。

③下線部英文和訳問題
  普段から構文を意識した読解を行うことがまず大前提である。対策は、上記の《英文読解》で述べたことに準ずる。
構文通りの日本語訳が作れるようになった上で、こなれた、自然な日本語を作る練習を積まねばならない。池附の英語は物語文が多く、下線が施されるのは、直訳だと意味の通りにくい、訳出に工夫が要る個所である。まずは直訳を行い、その日本語を吟味して、意味するところを考え、ふさわしい和訳を作る。その際、もとの構文から大きく逸脱することのないよう注意すること。英文和訳・英文  解釈は、あくまで構文に忠実であることが求められているからである。
英文和訳対策の良い問題集は少ないので、物語文を出題している難関私立高校の過去問等を用い、和訳を行い、信頼できる教師に添削してもらうと良い。

④和文英訳
  いわゆる英作文問題である。一行程度の日本語を英語に直すことが求められる。問われているのは、中学生範囲の重要構文である。不定詞、比較、関係詞などを中心に、応用として扱われている事項が問われることが多い。
公立中学の授業では、英作文の演習をする機会はほとんど無い。せいぜい整序英作文を行う程度であり、普段から自主的に演習を積んでおかないと太刀打ちできない。
  基本的には、重要構文を使いこなすことができれば対処できる問題がほとんどで、大学入試のように、わかりやすく英語で書きやすい日本語になおしてから英作文する、といった技能は求められていない。できるだけ簡潔な構文や表現を用いて書くことがポイントである。不定詞や比較の重要表現は必ず暗記して、すらすら書けるようにしておくこと。

⑤下線部内容説明
  下線部の意味する内容、下線部の動作の理由・原因などを説明する問題である。いずれにせよ、この設問は下線部前後の文脈把握能力が問われている。
  現代文の傍線部説明にも通ずるが、下線・傍線に関わる設問の鉄則は、傍線部および傍線部を含む一文の精密な分析を行う、ということである。設問を見た瞬間に適当に前後をまとめて解答を作るのではなく、まずは下線部の文脈把握を行う。この最初の文脈把握をいかに正確かつ丁寧に行うかでこの問題の成否は決まる と言ってよい。
下線および下線を含む一文に含まれている指示語、ディスコース・マーカー(つなぎ言葉)などに注意し、前後の「つながり」を把握すること。その際、下線部とその他の部分との対比関係、類似関係、因果関係、具体・抽象関係などに着目することもポイントの一つである。
  文脈把握によって、説明すべきことのおおよその目処がたってから解答作成にとりかかるわけだが、当然ながら説明問題には加点ポイントが存在する。たとえば、50字、5点配点の問題であれば、「①下線部の動作主を適切に述べている ②下線部の動作を具体的に言い換えている ③下線部の動作の理由を適切に述 べている/①1点 ②2点 ③2点」といったふうに、解答に盛り込むべきポイントが存在する。それらを意識して解答を作成すること。解答の指定字数も、 答案作成の助けになる。基本的に指定字数は、過不足なく収まるように設定されている。字数が足りないという場合は、何かしら解答ポイントを見落としているのだ、と考えて解答を練り直すこと。

⑥文章内容説明
  本文内容について疑問文による問いかけがなされ、それに対して、主語と述語をもつ文で答える問題である。基本的には、本文が読めていれば、ある程度は本文抜粋で書ける。疑問文で問うていることが本文中のどこにあるのか、素早く探し出し、要領よくまとめること。

⑦文章内容把握
  これも、本文全体が読めていることが前提となる。
  本文の内容を説明した文に True or False で答えるタイプの問題では、基本的に、本文の記述順に説明文が並んでいる。それを手がかりにして、本文のどこに該当箇所があるのか探し出すこと。説明文は、本文内容を別の単語で言い換えていたり、逆からの説明を行ったりすることがある。そのような点に注意深くなることが大切である。
文章の展開をまとめる問題に対処するには、最初に本文全体を読解する際に、ストーリーの展開を意識して、欄外にパラグラフごとの要点をまとめていくと良い。

⑧自由英作文
  自由英作文では、内容の良し悪しはほぼ問われていないと言ってよい。池附を志望する生徒とはいえ、所詮中学生であり、さらに30字程度の字数制限で含蓄のあることを述べられるはずもない。
結局、問われているのは、論理的に文章を構成することができるかどうかという点と、単語・基本文法を適切に運用できるかという点だけである。
  池附志望者となると、背伸びして難しい表現や単語を用いて書きたがる中学生がいるが、
そのような姿勢は逆効果で、むしろ大失点につながりかねない。英作文の基本は、できる限り簡潔で、わかりやすい英語を書くことに尽きる。また、自信を持って確実に書けない、うろ覚えの表現は絶対に使わないようにしたい。