◆出題形式

  試験時間は60分で、大問5つという形式はここ15年の間変わっていない。設問形式は、大問1が計算や整数問題を中心とする小問集合。大問2はやや特殊な形式で、速さの文章題・確率・タイル並べなど、年度によってバリエーションに富む。大問3は基本的に、関数の問題。大問4は幾何の問題で、長年、平面図 形の問題が出題されていたが、2010年以降は、立体図形の問題が出題されるようになった。最後の大問5は、15年間、一貫して、図形の証明問題が出題されている。

設問傾向

1 小問集合

  大問1では、毎年、3~5題の小問が出題される。近年は4~5題と問題の数自体は増加傾向にある。工夫を要する計算は2014年を除き、ここ5年間で頻出、方程式・平方根の計算・確率問題・グラフの変域なども毎年というわけではないが、そのいずれかが出題され、過去15年間の定番となっている。なかでも、要注意は、2010年・2015年に出た平方根と整数問題であろう。

2 様々な文章題

  大問2は特殊な形式である。過去15年分を概観すると、01年は関数と図形、02年はテスト平均の文章題、03年は線分通過のマス目、04年はガウス記号と確率、05年はタイル・立方体の敷き詰め・組み立て、06年は速さ、07年は方眼紙に図形を描く問題、08年は円周上に星型を作る問題、09年はタイル敷き詰め問題、10年はグラフと格子点、11年は素因数と指数、12年は色の塗りわけ、13年は自然数の桁を入れ替える文章題、14年は玉の取り出し方と旗の動かし方が絡んだ確率、15年は金貨の移動をもとにした規則性の問題であった。

出題内容をあえて分類すれば以下のとおりとなる。

(A) グラフ・関数・・・01年、03年、10年

(B) 文章題・速さ・・・02年、06年、13年

(C) 確率・場合の数・・・04年、07年、08年、12年、14年

(D) 整数・・・11年、15年

(E) タイル・立方体・・・05年、09年

  中学入試のような問題、難易度は違うものの兵庫県立高校入試の文章題に近い規則性が絡んだ問題も出題されている。求め方を書かされる年も多いので、解答までのプロセスをまとめる能力は当然として、はじめてみたような形式の問題が出ても、問題文を正確に読み解き、複数の数学的知識を融合させながら、論理立てて解く能力が問われている。

3 関数

  大問3は、01年と09年を除いて(09年は4に関数が移動、12年は後半に図形問題が出題)、毎年関数の問題が定番となっている。09年・11年のように、点の移動に絡んだ関数の問題が出題される年もあるが、基本的には、一次関数と二次関数のグラフが交差した高校入試の定石ともいえる問題が毎年出される。

4 図形(立体図形)

  大問4では、02年を除き、長らく平面図形の問題が出題されていたが、09年以降(前述のとおり、09年は図形が大問3に移動)は立体図形の問題が出題されるようになった。平面図形の時代は、面積比・円・多角形・折り曲げと幅広い角度から出題されていた。立体図形が定着して以降も、体積比・切り取り・球・展開図と毎年、工夫が凝らされている。

5 図形の証明

  大問5では、過去15年間、一貫して、図形の証明問題が出題されている。10年には、証明と合わせて作図の問題が出たこともある。兵庫の公立入試のように、誘導がついた穴埋め形式ではなく、他の難関私立と同様、一から自分で証明の過程を書いていく、いわば難関高校の定番問題である。

  幅広い分野から出題されており、どの分野も、そこまでの難問は出題されない。とはいえ、求め方を要求する問題も多いので、中学数学についての曖昧な知識・理解では、点に結びつかない。1の計算問題や他の問題を見てもわかるとおり、計算力が問われるというよりは、地道な思考力が問われる試験といえるだろう。

 

難易度

 

1 小問集合

  大問1の難易度は低めといえる。他の難関私立高校のように、高校レベルの複雑な因数分解も出題されず、連立方程式も係数が複雑になった程度である。工夫を要する計算については、典型パターンが多く、仮に工夫の方法が分からなくても、腕力で解けてしまう問題も散見される。確率の問題は基本中の基本。やや戸惑う問題としては、10年や15年の平方根を応用した整数問題くらいであろう。ただ、この問題とて、素因数分解の知識があれば動じる必要はない。

2 様々な文章題

  設問傾向でも述べたとおり、どんな分野の問題が出題されるか分からない怖さはあるものの、問題文から規則性を読み取れば瞬時に解答へとたどり着くことができる問題も多い。ただ、10年以降、出題される問題そのものや聞き方が難化傾向にあるのは確かで、10年の格子点の問題、11年の整数問題は、格子点や整数の基本知識がなければ、やや骨の折れる問題であった。また、14年の確率、15年の金貨の問題も、ゲームのルールを把握できなければ、まったく手が出せないという状況に陥る可能性を含んでいる。その意味で、この大問2は、解ける受験生はほぼ満点、解けない受験生は0点という、受験生にとってはまさに厄介な領域といえよう。

3 関数

  関数の問題としては、あくまで、基本~標準レベル。そもそも、高校受験数学にとって、関数分野は点の取りどころであり、池附もそのセオリーの範疇にある。基本的に、満点を狙う覚悟で望むべきである。

4 図形

  図形問題総合としてみれば標準レベル。一般に、立体図形の問題は、扱う図形が3次元化するだけで難易度が上がる傾向にあるが、池附の場合、立体図形の問題としては、基本~標準の域を出ない。ただし、立体図形そのもの、とりわけ、球体が絡む問題に慣れていない受験生にとっては、12年の問題などはやや難だったかもしれない。

5 図形の証明

  図形の証明問題としては標準レベルのものが多いが、年度によっては、やや難の問題も出題される。とりわけ、00年代前半は難易度が高めであった。近年は00年代前半ほど難易度は高くなくなってきてはいるものの、補助線をどこに引くかなど、慣れと一定のセンスは必要になってくるであろう。

総合難易度

  近年の大問2の特殊性、大問5の図形の証明問題の難易度と試験時間を照らし合わせれば、総合的には、標準~やや難レベルに入る。ただし、大問5の図形の証明は、易化傾向にあるので、他の難関私立と比べれば、決して太刀打ちできない試験ではない。まずは、基本的な問題を完璧に正解させ、難易度のやや高い問題でどれだけ上乗せできるかが鍵となるだろう。年度によっては、8割以上も狙えるはずである。